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インタビュー

【バンコク発】Kenji's Labオーナーシェフ中山健次 〜虚飾を拒否し、食へのこだわりでバンコクの飲食業界に挑む「食のクライマー」〜

毎週ムエタイジムに通いカラダを鍛え、暇を見つけてはタイや近隣諸国の壁を目指してクライミング。そして、自ら仕入れや仕込みもこなし、厨房に立ち腕を振るう。タフでストイックな料理人中山健次。彼がオーナーシェフをつとめる「Kenji's Lab」には連日、日本人、欧米人、タイ人などあらゆる人種が集まりいつも満席状態。特に深夜の時間帯になると同業の飲食店関係者が常連客としてカウンターに並ぶ。
2008年に来タイ、バンコクでインドネシア、タイ、イギリス人がオーナーの多国籍料理のレストランにて日本食の責任者に就任。2012年には独立してバンコクの食の激戦区トンローエリアに自らの名を冠した「Kenji's Lab」をオープンした。料理人として店を切り盛りする一方で、日本からの食材を紹介する催しに参画してメニュー開発、調理指導を依頼されるなど食のプロデューサとしての取り組みにも積極的だ。
日本のフジテレビが企画協力したタイでも人気の料理人対決番組「タイ版・料理の鉄人」(Iron Chef Thailand เชฟกระทะเหล็ก ประเทศไทย)では数少ない日本人審査員として活躍。日本からのゲスト鉄人として陳建一が登場した中華対決のときにも出演した。
そして、2017年2月、どんぶり専門店「よーい丼」をバンコク・プラカノンエリアにオープン。さらに、新店舗、新業態の準備を次々と進めている。


【バンコク発】Kenji’s Labオーナーシェフ中山健次 〜虚飾を拒否し、食へのこだわりでバンコクの飲食業界に挑む「食のクライマー」〜【バンコク発】Kenji’s Labオーナーシェフ中山健次 〜虚飾を拒否し、食へのこだわりでバンコクの飲食業界に挑む「食のクライマー」〜
ーKenji’s Labのコンセプトついてお聞かせください。

中山健次さん(以下中山):まず、自分が働きたい店、お客さんが通いたくなるような店を作ることを目標にしました。通いたくなるということは価格がリーズナブルだということです。ただ単に安いという意味ではなく、価格に見合った料理を出すという意味ですね。ベースのコンセプトは、赤提灯のようなカウンターメインの大衆酒場なんです。ただ、設えとしてはそういうものにはしたくなかったんです。新しくないですからね。他人が真似できない、コピーできない店にしたかったんです。だから、お店のデザインも自分でやりました。

【バンコク発】Kenji’s Labオーナーシェフ中山健次 〜虚飾を拒否し、食へのこだわりでバンコクの飲食業界に挑む「食のクライマー」〜ー日本で流行ってるネオ大衆酒場的なものですか。
中山:いまでこそ、そういう業態が日本でも流行ってるようですが、自分の中ではこのお店をオープンさせる時にすでにカウンターを中心にしたコミュニケーションが生まれる場を作ることを考えていました。そういう意味での大衆酒場なんですが、日本では、人件費が高いので100種類以上のメニューを揃えてこれだけの従業員を抱えたお店を出すのは無理なんじゃないかと思います。

ーコンセプトに対して実際お店の現状はどんな感じでしょうか。
中山:通いたくなるお店と言う部分ではその通りになってると思います。お客さんのリピート率がとても高い。メニューの方も、高級な食材を使ったものもありますが、安く飲もうと思えば安く抑えられる構成です。だから毎日でも通えるという意味でうまくいってると思います。

ーリーズナブルな価格のためにどんな工夫をしているんでしょうか。
中山:食材の原価に対してメニューの値付けをするのではなく、一皿あたりの粗利を考えて価格を決めるようにしています。サンマの燻製のように原価は安いけど仕込みに二日間かかるメニューもあるし、ウニのように原価は高いけど新鮮なままの状態で提供するメニューもありますからね。あとは、お皿にこだわります。いいお皿を使って、シンプルな調理、シンプルな盛り付けを心がけます。刺身のツマのようなもので盛り付けをごまかさない。そうすれば、余計な手間、余計な材料を使わなくて済みます。

【バンコク発】Kenji's Lab 〜虚飾を嫌い、食へのこだわりでバンコクの飮食業界に挑む「食のクライマー」〜ー今回新たに新業態で出店したことについてお聞かせください。
中山:新業態を始めようと思ったきっかけはプラカノンで沖縄料理店をやっている知人から大衆的な日本食店をいっしょにやらないかと誘われたことです。
でも、最終的にはKenji’s Labのスタッフのために出店を決めました。Kenji’s Labではスタッフがホール6人、キッチン7人いるんですが、定着率が非常に高い。しかもやめたスタッフが出戻ってくる。そして、レベルが高いんですよね。そういうスタッフとは出来る限りいっしょにやっていきたい。でも、現在のKenji’s Lab一店鋪では限界がある。だから新しい場所が欲しかったんです。

ーお店のスタッフの意識も高そうですね。
中山:もちろん、オフィスワーカー並の給料払ってるということもありますが、Kenji’s Labのコンセプトが自分が働きたい店であったのと同じくスタッフも働きたくなる店作りを重視しているんです。Kenji’s Labは週休二日ですけど、スタッフはもっと働かせて欲しいって言ってくるんですよ。だから、週7日営業の新しいお店に入ってもらったり、内装工事も手先の器用なスタッフが手伝ってくれたりと積極的ですね。もちろんその分、給料に反映しますから。

【バンコク発】Kenji's Lab 〜虚飾を嫌い、食へのこだわりでバンコクの飮食業界に挑む「食のクライマー」〜ープラカノンでどんぶり専門店「YooiDon」を出店した理由は。
中山まずはこのエリアに日本料理を出す店がまだまだ少ないってことですね。日本人もこれから増えてくるし、需要があると思います。タイ人の富裕層もけっこう住んでいて潜在的な可能性はありますね。あと、家賃負担が軽いことも重要です。お店の場所代にコストをかけるなら、そのお金を食材代とスタッフの人件費に使いたい。

ー今後の展開のご予定は。
中山:どんぶりメニューを中心にしてデリバリーを展開していこうと考えてます。「YooiDon」で食べたメニューが気に入って、家でも食べたいというお客さんのお宅に届けたいんです。将来的にはプラカノンの実店舗以上にデリバリーでの売上をメインに考えていきたいと思ってます。実店舗の客席にかかるコスト、サービススタッフの人件費のことを考えたらデリバリーの方が効率的ですよね。あとはゲストハウスを新規事業として考えています。

ー宿泊施設も展開するんですか。
中山:Kenji’s Labの近くに一軒家を借りてそこをゲストハウスにするんです。ゲストハウスと言っても、ツイン2部屋、ダブル1部屋、セミダブル1部屋程度の大きさです。一階に50平米くらいのリビングルームがあるのでここを中心としたコミュニティースペースという考えです。コンセプトとしては「大人の児童館」のようなものです。自分のもっている料理本を並べたライブラリーやバーカウンターを設えて来た人がくつろげるスペースにしていきたいです。
ターゲットは基本的に日本人。タイに在住している日本人が集まって泊りがけの宴会をしたり、長期滞在の日本人に利用してもらうことを考えてます。そういった方々に手作りの朝食を提供することも可能です。

 

 

中山 健次(なかやま けんじ)氏プロフィール
Fuigo Culinary Arts Co., Ltd. CEO/Chef

1969年生まれ。大学卒業後、映像制作会社に勤務。退職後、飲食業に転身。地元埼玉や東京の和食店などで働き料理人の経験を積む。2008年渡タイ、バンコクスクムヴィットの多国籍料理店「Face Bangkok」にて日本食部門の責任者となる。2012年独立、バンコクトンローにて「Kenji’s Lab」をオープン。2017年どんぶり専門店「YooiDon」をバンコクプラカノン地区にオープン。飲食店経営にとどまらず、日本食宅配事業、宿泊施設事業を計画中。中学、高校、大学と山岳部に所属し、現在でもクライミングが趣味。

店舗情報
店舗名:Kenji’s Lab
店舗所在地:808/13 Soi Thararom 2, Sukhumvit 55, Klongtan-Nua, Wattana, Bangkok 10110
営業時間:18:00〜25:00(L.O.24:30)、日曜、月曜定休日
TEL:02-381-0024
席数:40席
関連リンク
Kenji’s Lab フェイスブックページ
店舗名:YooiDon
店舗所在地:36 Sukhumvit 71, , Bangkok 10110
営業時間:17:00〜24:00
TEL:091-886-2287
席数:20席
関連リンク
YooiDon フェイスブックページ

(取材=まえだ ひろゆき)

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