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インタビュー

高級和食店でタイの日本食を牽引する“タイのサムライ”こと天裕グループ チャワヨット・ラッタクン氏が、タイの次はアメリカ・ロサンゼルス進出、ニューヨーク出店も計画中



2011年6月、タイ・バンコクのサトーン通りにオープンした高級日本料理店「天裕グランド」。“ホンモノ”を追求する姿勢が、上流階級のタイ人を中心に受け、連日賑わいをみせる繁盛店である。
チャワヨット氏は、イギリスに8年、アメリカに4年留学し、南カリフォルニア大学(USC)にてファイナンスを学ぶ。卒業後は、インベストバンキング企業に就職した後、タイに戻り、家業(不動産業、インターナショナルスクール経営、コミュニティモールの経営など)を営む。現在は、「天裕グランド」の他、日本酒バー「O’Zake BY TENYUU」、おまかせ高級寿司・和食の「野心 YASHIN BY TENYUU」の3店舗を展開。2014年内にはエムカルティエ(エンポリアム2)やロサンゼルスにも新店舗を出店し、近年中にはニューヨーク進出を計画するなど、いま勢いにのっている。

「野心 YASHIN BY TENYUU」の店内
「野心 YASHIN BY TENYUU」の店内

—フードビジネスに参入したきっかけを教えてください。

美味しいものを食べることが大好きで、海外留学時から各国の美味しいものをいろいろ食べてまわりました。そして、タイに帰ってからもさまざまな店をまわる中で、いつからか「自分自身がいつでも美味しいものを食べられるお店を作ろう」、「自分が食べて美味しいと感じるものを、他の人にも知ってもらいたい」との想いが芽生え始めたのがきっかけです。つまりは、趣味と情熱から始まったのです。
なかでも日本料理を選んだ理由は、料理の一つ一つに歴史や文化があると同時に、素材の一つ一つにも生産者や生産地などのストーリーがある。日本料理の美味しさはもちろん、特にそういう背景部分に惹き込まれたのです。

—今や大繁盛店として知られますが、日本食レストランを始めてよかったことはなんでしょう。

やはり一番は「お客様に美味しいと喜んでいただけること」でしょう。私は店を通じて、日本料理に関する啓蒙活動を心がけています。それは、店にいらっしゃるお客様へだけでなく、店を取り上げて頂くTVや雑誌などを通じてなど。実際に、この3~5年で、タイ人の日本料理に関する知識は格段に上がりましたし、そんな一助を担えたことが、良かったと思う点ですね。


「野心 YASHIN BY TENYUU」の料理
「野心 YASHIN BY TENYUU」の料理

—現在展開している3店舗について、教えてください。

私は同じ業態の店を展開するつもりはなく、今展開している3店舗は全てコンセプトが違います。「天裕グランド」はファミリーで楽しめる高級すし・和食レストランで、“Japanese Sake Bar”である「O’zake BY TENYUU」は、若年層のお客様が長時間楽しめる日本酒バーです。特に「野心YASHIN BY TENYUU」は、高級おまかせ寿司と和食、しゃぶしゃぶをメインとしており、チーフシェフに米シアトルの「SHIRO’S SUSHI」や、同ナパの「Morimoto Napa」で修行したタイ人シェフ、セッツ・リッウェー氏を招聘し、本格的な日本料理の提供を行なっています。
これから展開する店舗も、全てコンセプトを変えた日本食レストランを出店していきますが、その全てに「BY TENYUU」と入れ、天裕グランドのブランドを提示していく予定です。クルマに例えると「トヨタ」ではなく、「フェラーリ」や「ランボルギーニ」をつくっていきたいのです。(もちろん、トヨタは素晴らしいですよ!)

—フードビジネスを経営する上での苦労はありますか。

先ほど私は、フードビジネス参入のきっかけは“趣味と情熱”と言いましたが、この挑戦は正直儲かりません。儲けようと思って商売をするなら、他にもっともっといいビジネスがありますしね。
それでも私は、タイでもっと日本食を啓蒙したいと考え、スタッフにもそれなりの研修を行なっています。例えば、専門性の高い知識を習得してもらうため社員教育やトレーニングを大切にしたり、社員は必ず年に2回、日本に連れて行くなど。実際に2014年4月には、社員皆で九州の畜産ファームや野菜農園を見学に行きました。もちろん現地で食べ歩きもして日本のオリジナルに触れ、日本を学ぶという機会を現場のスタッフにも提供しているのです。


天裕グループ チャワヨット・ラッタクン氏
チャワヨット・ラッタクン氏

—タイにおけるレストランビジネスについての考えを教えてください。

この数年、お客様の目的が「FACEBOOKやインスタグラムなどのソーシャルメディア上にアップして自慢したい」という潮流が強くあります。店側もこれに迎合して、美味しさよりもカッコよさやファッションを求めているところがあります。写真を撮ったらキレイだけど美味しくない店……。それは決して長くは続かないと私は思っています。
「いずれはオリジナルの美味しさが追求される時代が来る」。この考えをカタチにしたのが「野心 YASHIN BY TENYUU」です。正直、売上げは超低空飛行ですが(笑)。それでも我々の取り組みを理解してくれるお客様が少しずつ増え、リピーターになってくれることに喜びを感じています。

—最後に、タイに進出する日系外食企業の方へ一言。

私としては、とても喜ばしいことですね。やはり日本人の方が、和食についての知識を持っていますので、そうした方々が来て“ホンモノ”を供することで、全体的にタイの和食が底上げされるでしょうから。
将来的には、一緒に楽しく情熱を持ってやっていけるような日本人経営者とのパートナーシップやコラボ店もできればと考えていますね。


「野心 YASHIN BY TENYUU」のExecutive Sushi Chef セッツ・リッウェー氏
セッツ・リッウェー氏

タイ人版 将太の寿司
天裕グループ 「野心 YASHIN BY TENYUU」
Executive Sushi Chef セッツ・リッウェー(Seth Ridgway)氏

タイの高校を卒業し、19歳より10年間、母と共にアメリカへ。元々日本のゲームやマンガから日本文化への憧れを抱いていたことにより、カリフォルニアの小さな日本料理店で修業を始める。もっと日本食を追求したいと、ザガットや数々の有名雑誌にもノミネートされ、アメリカ人のみならず日本人にも人気の高いシアトルの「SHIRO’S SUSHI RESTAURANT」の加柴司郎氏の下で、寿司職人として修行。その後、アイアンシェフ・森本正治氏が、保養地やワインの産地として有名なカリフォルニア・ナパにオープンした「Morimoto Napa」にて修行を重ねるなど、日本食料理人として10年以上の経験を積む。現在は、天裕グループのチャワヨット・ラッタクン氏より招聘を受け「野心 YASHIN BY TENYUU」のExecutive Sushi Chefとして腕をふるう。

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