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ワタミフードサービスシンガポール株式会社（社長 黒須 乾 ）は株式会社スパイスワークス（代表取締役社長 下遠野 亘）にコンセプトやメニュー開発、サービスのプロデュースを委託、本気で日本の食文化を伝える店として「肉割烹」を４月６日ION Orchardにオープンした。同店は、WATAMIからの業態転換となる。コンセプトは「日本の高級和食割烹をもっと身近に、酒をもっと身近に」。

スパイスワークスは「マイナーな食材をメジャーに、メジャーを定番に」「陳腐化した業態の再生・復興」をモットーに、日本国内で79店舗を展開する他、飲食店の内装・施工、プロデュースも行っている。素材特化型の業態開発を得意とし、「肉寿司」をはじめ「貝殻荘」「炉とマタギ」「仕事馬（馬肉専門店）」といった人気業態を数多く生み出している企業だ。

今回、人材力と資本力のあるワタミとスパイスワークスがタッグを組むことにより、強烈なパフォーマンス力とサービス、創造力あふれるメニューで、和食に飽きてきたシンガポールの人達をあっと驚かせる店が実現した。今後、成熟したシンガポール市場では、このように互いの強みを生かして共同開発するケースが増えるであろう。

「高級和食割烹をもっと身近に」を掲げるだけあって、当店では和牛、フォアグラ、雲丹、トリュフといった高級食材を随所に取り入れたメニューを提供している。かつて江戸っ子に愛された「牛鍋」からヒントを得た、ステーキ肉の味噌煮込み鍋「焼鉄 江戸焼き」（１人前 S$18.9〜）や、フォアグラや雲丹を使用した肉寿司の盛り合わせ「特選肉寿司」（全９種 S$36.9）が売りだ。また一品メニューも充実している。「こぼれイクラおろしポン酢」（S$8.9）、「冷やしすぎトマト」（S$ 4.9）、「和牛炙り肉じゃが」（S$18.9）、日本伝統の鶏肉料理を焼き鳥スタイルで表現した「鶏串」（各種 S$3.9）など、多様なアイデアメニューを提供している。全体的には鍋から〆のご飯、デザートまで豊富なメニューラインナップを揃えることで、接待から家族での食事、気軽な飲み会まで多様なシーンに対応できるように工夫されている印象だ。

また、特筆すべきはオリジナリティ溢れる100種類のモヒート（S$7.9）や、シンガポールでは希少な50種類を超える日本酒を小売価格並みの安価で提供していることだ。そして最も驚いたのが日本酒のBYO（Bring Your Own、持ち込み）が可能であることだ。しかも持ち込み代はサービス料に含まれている。BYOを取り入れた理由は「和食を食べる時には日本酒で」と、日本酒文化をシンガポールの人達に定着させたいとの強い想いからだという。シンガポールではローカルの飲食店でBYOに対応している店もあるが、日系飲食店ではまず見かけない。いや、日系飲食店はアルコールで収益を上げているところが多く、それでは採算が合わないのが本音であろう。しかし肉割烹ではそれを実現してみせている。

人材育成をしっかり行い、サービスに力を入れているのも特筆すべき点だ。鍋や一品もの、デザートに至るまで目の前でスタッフが調理しながらサーブするので、顧客は見ているだけで楽しく、何よりもこのパフォーマンスによって特別感を味わえる。日本人に比べるとサービス精神に乏しく、器用ではないスタッフも多いであろうここシンガポールで、このサービスを実現するのは容易ではないはずだ。

場所はシンガポール一の繁華街オーチャードにあるION Orchard。観光客も多く集まる、シンガポールでは有数のショッピングモールだ。ここに出店することは、シンガポールに住む人達だけではなく、シンガポールに観光で集まる全世界の人達に「肉割烹」をアピールすることになる。

スパイスワークス代表の下遠野氏は言う。「成熟したシンガポール市場に出店した意味は、少しでも多くの外国の方に日本の食文化が伝えられればと、そこに意味を見出したからです」。賃料も人件費も高いシンガポールに出店する意味はまさしくここにある。ここION Orchardであれば、世界へアピールするにはピッタリだ。これから海外展開するにあたって、この「肉割烹」は旗艦店となるであろう。今後の動向に要注目である。

（取材＝山口 エリ）

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