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編集長コラム

シンガポールからアジア外食市場のこれからを考える

PROFILE

山口エリ

山口 エリ
J-DREAM PTE LTD 代表取締役社長。 1995年、不動産会社に入社したが不動産業務には一切つかず、同社の外食アミューズメント事業部にて飲食店・アミューズメント店(パチンコ店、カラオケBOX)のマネジメントに従事。 2002年、思いつきで中小企業診断士を取得。それをきっかけにITコンサルティング会社に就職、様々なシステム開発コンサルティングに約2年間携わる。 2004年に独立。たまたまクライアント先にメンタルヘルス不全の従業員が多く、産業カウンセラーの勉強を始めたのをきっかけに、心理学と人材開発に傾倒、約10年間人材開発に携わる。 2013年、結婚をきっかけにシンガポールに渡星。J-DREAMを設立。夫婦で日系企業のアジア進出支援を手がけている。


いまだ日本食レストランの進出が続くシンガポール。シンガポールは世界一ビジネスのしやすい国と言われており、この国を拠点にASEAN諸国への事業展開を試みる企業も多い。しかし、ASEAN諸国の中でも成熟しつつあるシンガポール市場だからこそ留意しなければいけない点がある。キーワードは「進む本物志向と価格低下」だ。これはシンガポールに続き、タイや韓国、香港でも見られる傾向であろう。

最近のシンガポールの日系飲食店を見ていて痛感するのは、流行る店と流行らない店がハッキリ分かれていることだ。かつては日本人から見ると驚くような「なんちゃって」日本食レストランであっても、日本食というだけでもてはやされた時代もあった。町の看板に「日式」と付ければ流行ると言った具合だ。

しかし、シンガポールではそんな時代も終わり、本物の日本食が求められる時代となった。ローカル消費者の日本食に対する目が肥えてきたからだ。背景には日本食レストランの増加、そして経済の発展に伴い日本への旅行者が増え、本場の日本食を知っている消費者が増えたことがある。タクシー運転手との会話で日本への旅行話がいかに多いことか!日本への旅行者が多いことを日常的に痛感させられるのである。ローカル消費者の目が肥えてきた結果、シンガポールで流行っているお店には2つの傾向が見られるようになった。一つは安い地元食材を使うなど工夫し、美味しいものを安く提供する業態。もう一つは本場日本から食材を仕入れ、とことん付加価値にこだわって提供する業態である。

IMF(2013年)によればシンガポールの一人当たりGDPは55,182米ドルと日本の38,468米ドルを大きく上回る。またシンガポール統計局が発表した世帯支出調査(2013年)によれば、食費への支出は月額1,188シンガポールドル、支出額全体の25.1%にものぼる。この数字から言えることは外食志向が強いお国柄だということだ。しかし、普段はフードコートやホーカーズ(屋台)で4シンガポールドル〜7シンガポールドル(約300円〜600円)で食事を済ませており、物価が高い国とはいえ、日常的に食べるものはそれほど高くないのである。だからたとえ日本食であってもカジュアル業態に対してはお財布の紐がきつくなることを忘れてはならない。

一方でシンガポールほど日本食市場が成熟してくると、進んでくるのが本物志向だ。この流れは今後ますます加速するだろう。最近は「◯◯専門店」といった専門店も増えた。餃子専門店、油そば専門店、尾崎牛専門店といった具合だ。また特定の産地から仕入れた食材へのこだわりなども消費者から支持されている。これは本当に美味しいものが分かるローカル消費者が増えていることの表れだと言えよう。

シンガポールで見られるこのような市場の変化は、タイ、韓国、香港など日本食市場が成熟しつつある他国でも見られつつある。これはアジアの人達が日本食を食べる機会が増え、味覚が育ち、日本食がより身近なものへと変化していることを意味する。だからこそアジア市場のハードルが上がってきていることを意識し、気を引き締めて事業展開しなければならない。

海外にいると、日本の外食産業のレベルの高さに驚かされることがある。常々、競争を繰り返し、厳しい消費者の欲求に応えてきた結果、ここまで高いレベルまで到達したと言えよう。そんな日本の外食をアジアの人たちは期待し、待っている。

今後、「フードスタジアム アジア」は、新しく体制を整え、アジア各国に現地のライターを置くことで、アジア市場の最前線を調査し情報発信していく。これからますます海外への事業展開の気運が高まるだろう。フードスタジアムはその一助となるべく、各国の視察ツアー、パートナーや出店物件等の紹介など、これまで築き上げた現地ネットワークを活かし、事業支援にまで踏み込んでいく所存だ。「新生フードスタジアムアジア」を今後ともよろしくお願いいたします。

アジア支部編集長
山口 エリ

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